淫魔と聖職者
風呂敷包みから取り出された衣装を、冬獅郎は半眼で見遣った。
「何だ、これは?」
「ハロウィーン・パーティーの衣装です」
「それは分かっている。俺が訊きたいのは、おまえの衣装がなんでこんなにケバいのかってことだ」
「うちのお題、『聖職者と淫魔』だったんですもの」
と乱菊は応じた。
「この組み合わせなら、あたしが
「別に、松本が
淫魔というお題自体が気に喰わないが、乱菊にこの露出度満点の不埒な衣装を着せるくらいなら、自分が淫魔役をやった方がまだましだと考えての発言だった。だが、乱菊は、
「駄目です!!」
と大声で強く否定した。
「隊長が淫魔なんかやったら、ゴキブリホイホイ並みに女の子がひっかかっちゃいます」
「あぁ?」
「引っ掛かった女の子が妊娠したらどうするんですか!?」
「淫魔役ったって仮装だけだろうがっ!! 妊娠させるようなこと、するか!!!!」
思わず肺活量の限りに怒鳴ったが、乱菊は、
「隊長が淫魔なら、見ただけで妊娠しちゃいますっ!!」
と負けじと叫び返した。
「出来るか、そんな器用なこと!!」
怒鳴りながら、冬獅郎は脱力した。淫魔の仮装の冬獅郎が女を魅了するというのなら、乱菊自身はどうなんだと、正座させて小一時間ほど説教したい衝動に駆られた。彼女は自分の美貌もグラマラスな肢体もきっちり自覚を持っている女だが、それが男の劣情に及ぼす影響についてはどうも認識が薄いような気がしてならない。この衣装だけで、七、九番隊あたりの副隊長なら前かがみになるに違いないだろうに。
しかし、今更、どうしようもないのも事実だった。パーティーの開始時間まであと一時間。替えの衣装はどうあがいても間に合わないし、総隊長の肝いりで開催されるものだけに不参加というわけにもいかない。
深い深い溜息をついて、冬獅郎は、
「仕方ねえ。分かった」
と乱菊の淫魔を認めた。
「ただし、おまえは聖職者に調伏された淫魔だ。調伏されたんだからな、絶対に俺から離れるな」
「はい?」
「一人でふらふらと挨拶しに行ったりするな、ってことだ」
とりあえず、冬獅郎が傍に居て、絶対零度で睨みを利かせていれば、男どもも邪まな妄想を働かせる根性はないだろう。たとえ頭の中の想像の産物であろうと、乱菊が他の男を誘惑するなど許さない、と密かに拳を固める氷雪系最強の男であった。
ことの発端は一ヶ月前の女性死神協会の幹部会の決議だった。
協会会長である草鹿やちるの「ハロウィーンを尸魂界でもはやらせよう」との提案が、可決されてしまったのだ。やちるの狙いは菓子である。ハロウィーンでなくとも、総隊長や十四郎などの彼女を日頃から可愛がっている隊長格には、やちるの為の菓子を常備している者が多い。用意はなくとも手持ちの菓子を分け与えたり、これで菓子を買えと小遣いを握らせたりするので、彼女の菓子獲得率は実に八割以上なのだが、やちるは更なる菓子の獲得に野望を燃やしたのだ。ハロウィーンが定着すれば、その日は誰彼かまわず、
「とりっくおあとりーと」
の呪文ひとつで菓子をぶんどれる。なお、やちるの認識では菓子を強奪する為の呪文であるが、「とりっくおあとりーと」は実際は呪文ではない。「Trick or Treat」、すなわち「ご馳走をくれなきゃいたずらするよ」という、ハロウィーン行事で練り歩く子供たちの決まり文句である。
ハロウィーンは、十一月一日が基督教における万聖節(すべての聖者を讃える日)に当たる為、その前夜を意味する「HallowsEve」が訛って「Halloween」と称されるようになったものだ。しかしながら、そこで行われている仮装やお菓子を求めて練り歩くといった行為は、実は基督教とは相容れない。ケルトの旧い祖霊信仰に基づく風習が発展・変化したものである。ハロウィーンの行事が盛んなアメリカでも、宗教的に厳しい基督教徒の中にはこのお祭りを忌嫌する者も多いし、認められている地域でもあくまで宗教とは関係のない親睦行事としているに過ぎない。
だが、もちろん、やちるにはその文化的・歴史的背景など関係がない。「とりっくおあとりーと」と魔法の呪文を唱えれば、菓子を貰える。くれない者には報復としていたずらをしても咎められない。なんて素晴らしいお祭りなんだろう、という思考を経て、尸魂界でもハロウィーンを当たり前の行事として盛んにしよう、と目論むに至ったわけだ。その企みに、娯楽の普及に熱心な女性死神協会の幹部が乗った。やちるの提案はあっさりと満場一致で可決され、行事定着の為の一環として、隊長格による仮装パーティーが提案されたのだ。
冬獅郎としては、そういう行事は出来れば勝手に盛り上がってくれ、という心境であった。やりたい者だけ楽しめばよい話であって隊長格がわざわざパーティーなどを催さなくても、と考えたのだが、見かけによらず宴会好きの山本が乗り気になってしまったのではどうしようもなかった。もともと娯楽に対して積極的な八、十三番隊長が賛成にまわり、提案元の女性死神協会幹部を務める女性隊長格の面々からにっこりと笑顔を向けられては、冬獅郎や白哉などの「勝手にやってくれ」派に分はなかった。こうして、ハロウィーン・パーティーの開催は隊長格会議の決定事項となってしまったのだ。
仮装については副隊長会議で決定するよう、一任された。副隊長たちはそれぞれが考えた仮装の題目を持ち寄り、シャッフルして籤引きしたのだという。その後、いくら何でも無理だと思われる題目を引いた副隊長が他隊の副隊長と交換を交渉したりした結果、各隊の仮装が最終決定した。ちなみに「現世アニメの美少女戦士」の題目を引いてしまった一番隊の雀部は、四番隊の勇音に泣きついて「武蔵VS小次郎・巌流島の決闘」と交換したそうだ。さらにちなみに「聖職者と淫魔」の題目は、もともとは七番隊の射場鉄左衛門が引いていたのだと、乱菊は説明した。確かに、どう考えても、狛村と鉄左衛門では聖職者も、ましてや淫魔など無理だろう。それは認めざるを得ないが、だからといって十番隊に交換を持ちかけなくてもいいだろうと、冬獅郎はむっとしていた。よりによって乱菊に交換を申し出た鉄左衛門と、題目を見た瞬間に嬉々として彼の味方をして交換に応じさせた修兵は後で締めよう、とパーティーの一時間前にして題目決定の経緯を知らされた冬獅郎は、物騒な決心を固めた。そうして、七、九番隊副隊長の不幸が確定している間に、乱菊は着替えを終えて仮眠室から出てきた。
乱菊ほどの美貌とスタイルがあれば、どんな服を身に着けても美しい。
それは厳然たる事実だが、しかし、淫靡なのもまぎれもない現実だった。
毒々しい血色のドレスは、胸元も背中も大きく抉れていて、限界ぎりぎりまで膚を見せている。スカートは丈だけは踝まであるのだが、両脇に太腿の付け根までの深いスリットが入っていた。しかも、よくよく見ると布地の部分も裾窄まりに布の面積が少なくなっており、スリットから脚が否応もなく零れるような造りになっていた。冬獅郎は乱菊の水着を露出が高いとよく非難していたが、太腿を剥き出しにした水着の方がむしろ中途半端に隠すよりも明朗にして健全であると、彼は認識を改めた。とにかく、目のやり場に困るほどにエロティックだ。その上、サキュバスであることを意識した乱菊が施した、いつもよりも濃く、殊更に妖艶さを強調する化粧も、冬獅郎の気に障った。必要以上に紅い、派手な色合いのルージュも、目元にくっきりと引かれた濃いアイラインも不愉快だ。彼女が妖艶な外観とは裏腹に古風で身持ちの固い女であることを知っているだけに、「淫魔役なのだから仕方がない」と理由付けを試みてもなお、その淫乱に見える化粧は冬獅郎の精神をざわつかせずにいられなかった。すっかり役柄になりきっている乱菊のしどけなくも色っぽい姿に、冬獅郎は彼女を会場に連れて行くことに鬱屈した。
一方、乱菊はカソリックの神父に扮した冬獅郎に、
「素敵…」
とうっとりとしていた。
「流石は隊長です。神父さまの格好も決まっています」
彼はキャソックと呼ばれる神父の平服を着ていた。現世で男子学生が身に着けている学生服を踝の丈まで伸ばしたような形状のスタンドカラーの服だ。その上から丈の短い前開きのケープを羽織り、腰には赤いサッシュベルトを巻いている。小道具としてロザリオを掛け、右手の薬指に指輪をしている。この指輪は本来であれば、神の教えに殉じ、神父としての職務との婚姻の表明の為に左手の薬指に着けるものなのだが、冬獅郎はそれを厭うて右手にしたのだ。中身はくりぬかれて空だが、見かけだけは分厚くて重たそうな革張りの表紙の聖書を小脇に抱えている。
(こんな神父さまに布教されたら、あたしだったら速攻で改宗しちゃいそう…)
尤も、婚姻可能なプロテスタントの牧師とは異なり、神父は結婚不可である。神父に恋をするというのは不幸への一歩を踏み出すことを意味している。冬獅郎が本当に神父であった日には布教どころか、道を踏み外す女性の大量製造器となりかねないだけに、
(良かった。本物の神父さまじゃなくって)
と乱菊は無意味な安堵を感じていた。
「松本」
呼びかける冬獅郎の声に剣呑な色を感じ、乱菊は、
「何です?」
と顔色を窺うような声音で応じた。
「ひとつ、確認したいんだが」
「はい」
「下着、ちゃんと着けているんだろうな?」
「へ?」
だが、冬獅郎の表情は真剣である。
彼女のドレスは、身体の線をくっきりと際立たせるぴったりしたデザインだった。下着を身に着けていたら、絶対にその線が浮き出るはずだ。しかし、それらしいものがいくら目を凝らしても見当たらないことに、冬獅郎は不審を抱いたのだ。まさか下着を身に着けていないのではあるまいな、と威嚇のオーラを放つ上司兼恋人に、
「これ、下着と一体型のドレスなんです」
あっさりと乱菊は答えた。
「あ?」
「ワンピースタイプの水着の上にドレスが張り付いているって説明したら分かりやすいですか?」
「なるほど…」
胸は現世で調達してきたシリコン製のブラジャーでガードしてあると説明され、冬獅郎は冷気を引っ込めた。彼女をパーティー会場に連れ出すことは無念極まりないが、もう選択肢はない。絶対に彼女の傍から離れるまいと決心も新たに、彼は乱菊と連れ立って隊舎を出た。
隊長舎に帰り着いた時には、何とも言えず疲れ果てていた。
決意した通りに、サキュバス・乱菊の傍から片時も離れない冬獅郎に、
「大変だねぇ」
と緩く笑った春水は中華風の甲冑姿だった。八番隊の題目は項羽と虞美人だったのだ。眼鏡を外し、同じく中華風の貴婦人の装束に身を包んだ七緒を伴った彼はすこぶる機嫌が良かった。十四郎から聞いたところによると、虞美人が眼鏡を掛けているのは変だという春水の主張に納得した七緒はコンタクトレンズを用意したのだが、いざ付けてみると合わなかったようで痛くてとても装着出来なかったのだそうだ。近視でしかも乱視の気味もある彼女は眼鏡なしでは足元がおぼつかない。題目が項羽とその愛人であるし、足元に不安もあることから、今日ばかりは七緒も春水のエスコートをおとなしく受け入れたようだ。彼女に引っ叩かれることもなく、堂々と肩を抱ける春水のご機嫌ぶりはよく理解できる。
「七緒も満更でもなさそうですね」
こっそりと、嬉しそうに乱菊に耳打ちされて、
「かもな」
と冬獅郎も同意した。意地っ張りな七緒が素直になれないだけで、春水に惹かれていることは十番隊主従の目には明らかだったからだ。周囲に対しても、自分自身に対しても、いくらでも言い訳が出来る今の状況は七緒にとっても願ってもないところなのだろう。
気持ちが完全に七緒に向いてしまっている春水は、乱菊の色っぽい姿にも、
「さすがに乱菊ちゃんだねぇ。こんな色っぽいサキュバスに迫られたらどんな男もいちころだよ」
といつもの口調で称賛しただけだったので事なきを得た。十四郎も、脚線美を惜しげもなく晒した美少女戦士のコスプレの烈に意識が集中していた為、冷気で攻撃されることはなかった。だが、それ以外の男は乱菊から5m圏内に近付けなかった。鉄左衛門、修兵はもとより、うっかり太腿に見惚れてしまった恋次も、間違って乱菊の胸の谷間に視線を固定させてしまったイヅルも、直後、絶対零度の冬獅郎の視線に晒されて、内心で許しを乞いながら退散するしかなかった。
そうやって、パーテイーの間中、乱菊に近付こうとする男という男に威嚇を放っていた冬獅郎は、精神的にとても疲弊してしまったのだ。
だが、それ以上に昂る心があった。
こんなに淫猥で挑発的な姿は乱菊の本質にそぐわないと感じつつ、それでも、欲望を刺激されている自分がいる。胸も、腿も、全て自分のものであるはずだ。他の男の目に触れさせるなど許せないと、子供じみた独占欲で鬱々とする己がいる。
「たいちょ、お疲れさまでした」
彼を労う乱菊の声は平常のものだったが、見慣れない下品なほどに真っ赤な唇から発せられるのに、ぶつんと冬獅郎の理性は振り切れた。
一瞬後、彼は乱菊を畳の上に押し倒していた。
「たい、ちょ!」
抗議の叫びは聞かないとばかり、強引に唇を塞ぎ黙らせる。乱菊を押し付ける腕に必要以上に力が入り、彼女が顔を歪めているのに気付いていたが、構わずに二度、三度と、唇を合わせる。激しい口接けに真っ赤な口紅は剥げてしまい、漸く、冬獅郎は唇を離した。ぐいと、己の唇を手の甲で拭うと、乱菊から移った紅が血のように甲になすりついた。
「…たいちょう…」
思いもかけない激しさに怯えているのか、乱菊の声がわずかに上擦っている。
「おまえがそんな恰好をするのが悪い」
低い声で応えた冬獅郎に、乱菊は弱々しい言い訳を試みた。
「だって…、お題が…」
「だからって、松本が淫魔じゃなくたってよかっただろう?」
パーティーに出向く前の主張を冬獅郎は繰り返した。
「だって…、隊長に淫魔なんて…」
この生真面目で清冽な人が「淫魔」などといういかがわしいものに扮するのは、単なる仮装でも嫌だった。それに、淫魔に扮した冬獅郎の姿を想像した瞬間、乱菊はそれを他の女の目に触れさせたくないと思ってしまったのだ。
「だから内緒にしてたのか? 箝口令まで敷いて?」
「…ごめんなさい」
冬獅郎は乱菊の腿を乱暴に撫で上げた。びく、と体を震わせた乱菊に、
「これは俺のものだろう」
独占欲も露わに冬獅郎は告げた。
「だのに、他の男の目に曝しやがって」
冬獅郎は乱菊の胸もとに顔を埋めると、胸の谷間を強く吸い上げた。
「たいちょ、そこっ!?」
いつもの着付けだと、死覇装からはっきりと覗ける位置に征服の証を散らさせた。
「おしおきだ。鬼道で消したりするんじゃないぞ」
「だって、ここ…、見える」
「普通に着付けりゃ見えない」
と冬獅郎は一蹴した。
弱い耳朶を舌先で責めながら、冬獅郎は細い肩ひもを乱菊の肩から落とした。そのままドレスを下に引き下ろす。零れ落ちた双の乳房に張り付いているシリコンのブラジャーを引きはがすと、大きな鏡餅のような乳房に飾られた薄紅の絞りとその頂点の桜花の蕾が露わになった。冬獅郎の胸元に掛けられたままのロザリオが乳房を滑り、その金属質の冷たさに乱菊は身震いした。
「たい、ちょ…。神父さまがこんなことしちゃ…」
「神父なんて俺の柄か」
ロザリオが冬獅郎の動きに伴って、彼女の胸の上を往ったり来たりして愛撫を施している。それを見咎め、冬獅郎は不機嫌も露わにロザリオを抛り捨てた。もとより仮装用の小道具で宗教的な意味などないとはいえ、聖職者の器物を模したものがぞんざいに扱われるのを、乱菊は申し訳ない想いで見送った。
「俺が譬え本当に神父でも、おまえになら堕ちてやる」
きっぱりと言い切られ、乱菊は思わず冬獅郎に手を伸ばした。
「たいちょ、隊長!」
我から唇を重ねて来た乱菊を迎え入れ、冬獅郎はぬめった舌を彼女と絡ませた。
「ん…」
微かな喘ぎが耳に届く。彼が乳房をぐいと掴み上げると、乱菊は身悶えしながらも自らと彼の身体の間に腕をこじ入れて、キャソックの釦を外し始めた。
キャソックは三十三個もの釦がついている。これはキリストが地上で過ごしていた年月という極めて宗教的な意味のある数字なのだが、基督教とは無縁の死神にはただただやたらと数が多いとしか言いようがない。冬獅郎に乳房と腿を愛撫され、びくびくとのけ反りながらも、何とか十個余りの釦を外したが、それでもやっと胸がはだけたくらいである。
「隊長…」
「何だ?」
「神父さまの服って脱がせにくい…」
「つか、脱がすもんじゃねえだろう?」
神父は妻帯禁止だ。キャソックを女が脱がすとしたら、今の冬獅郎のように仮装か、大怪我をしているといった緊急事態でもない限りは、破戒神父ということになる。
「あ、そっか…」
言いながら、乱菊は冬獅郎のアンダーシャツの胸元を
「今日は積極的だな」
なだれ込むように抱き合っている二人は、未だに硬い畳の上である。少し余裕を取り戻した冬獅郎が、乱菊の胸の果実を口に含みながら告げると、
「だって、今日のあたしはサキュバスですもの…」
と乱菊はうっすらと笑みを零した。真っ赤な口紅は取れてしまったが、常よりも強く、黒々と縁取られたアイラインは健在で、その妖艶さにいったんは落ち着きかけていた昂りが再び燃え上がった。
「神父さまを誘惑するの」
と乱菊は続けた。
「神様にも、他の女の人にも目をくれないように、夢中にさせなきゃ…」
甘ったるい媚を含んだ言葉に、
「とっくに夢中だ」
と答える。冬獅郎はきつく胸の蕾を吸い上げながら、利き手を太腿から服の内部に侵入させた。乱菊は彼にも理解しやすいように水着と一体型のドレスだと説明したが、実態はボディスーツに近かったようだ。秘部を探った冬獅郎はクロッチ部分に釦ホックがあるのを知覚し、それを外した。
「濡れてるな…」
と動きを阻む布から自由になった指先が、彼女の泉に浸された。こんこんと湧き出でる温かくぬめりを帯びた蜜をゆるりと掻き回してやると、
「ふ…ううン…」
と悩ましげで熱い吐息が零れ落ちた。
その間にも、乱菊は一個、また一個と釦を外し続けた。腰下まで釦が外れたところで、冬獅郎は一旦乱菊から体を離し、キャソックを脱ぎ捨てた。離れずとも、脱いだとも脱がないとも曖昧なままで抱き合える着物と比べて、いちいち身体を自由にしなければ邪魔になってかなわない洋服は無粋だ。そう感じながら、アンダーシャツも乱暴に脱いでしまうと、彼は乱菊の腰に引っ掛かっていたドレスを力任せに引き下ろした。畳の目が乱菊の背に写っているのを目にして、冬獅郎はちっと微かに舌打ちをした。脱ぎ捨てたキャソックを広げると、乱菊をその上に横たえる。
「たいちょ…」
「ああ?」
「罰当たりですよ。神父さまの服を…」
「サキュバスが気にするか?」
と冬獅郎は嗤った。
「これが本物の神父のものなら、俺だって敬意を払う。けど、真似して作っただけの仮装用の衣装だろう? そんなものにいちいち敬意を払えるか」
そう告げながら、うっとりと酔った表情で見上げてくる乱菊の胸に、冬獅郎は再び齧り付いた。
甘い吐息を絡めあいながら、本能の赴くままに、二人はエデンの果てに堕ちていった。
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「淫魔と聖職者」
えーっと、ハロウィーンっていつだったかしら? あら、やだ、奥さん、この間までかぼちゃが街中に飾ってあったのにいつの間にか、なくなっちゃって。まぁ、年を取るとどんどん時間って過ぎてしまいますねぇ。せっかくかぼちゃのパイを焼いたんですけど、間に合いませんでしたわ。
思わず、奥様方の井戸端会議風にお届けしました。クリスマスのイルミネーションが街を飾る今日この頃、今更感満載ですけど、一応、捧げもの作品です。いえね、「ネタが纏まったらプレゼントしますねー」と先方(「ひらひら」さま)にお伝えした時は、九月中旬だったですよ。ハロウィーンに間に合うだろうと見積もっていたのですが、基本、私の見積もりはたいそう甘いということを全然自己学習出来ていませんでした。ハロウィーンって何? それっておいしいの? という頃になってようやくネタが纏まったって、遅い、ちゅーねん。
ですが、先方には快く受け取っていただけたのでよしとしよう、ということで、自分とこにもUPしました。捧げ物なので本来は独立したお話なのですが、拙宅に置くなら大人隊長だしこの辺の時間軸でいいや、とかなりいい加減な決定の仕方で格納場所を決めました。
なお、総隊長と雀部さんの武蔵と小次郎はあまりにもお歳を召していらしたので「巌流島の決闘じゃなくて、巌流島の老後では」と囁かれておりました。また、文中で卯ノ花さんが仮装しているのはセー○ームーンのセーラー・プルー○。調べた限りでは美少女戦士もので一番年齢設定が高そうだったので。勇音ちゃんはミニスカを泣いて拒否した為、エヴァン○リオンの綾○レイの扮装になりました。身体のラインが丸わかりのあの戦闘服とセーラー○ーンやプ○キュア系のミニスカと勇音ちゃん的にはどっちが良かったかは微妙。なお、何故か山田花太郎くんも卯ノ花隊長の命令で○リキュアのコスで参加していたと、以上、作品にはしていないですけど、管理人の脳内裏設定。