夏の夜の夢


 根っからの研究者気質でもって毎日欠かさずに記録している気温・湿度・天候の記録を分析した結果、どうやら今夏は数十年ぶりの猛暑であるらしい。最高気温の記録こそ超えてはいないが、30℃を超える日の連続記録は過去最長を本日更新した。
 雨も少ない。
 数十年前の猛暑の際は、激しい夕立が多かったのだが、今夏は夕立そのものがほとんどない。降っても時間が短く、雨の範囲が極端に狭かった。瀞霊廷内でも東と南は激しく降ったが、それ以外の区域は一滴も降らなかったという類はざらである。
「夕方に降ってくれると凌ぎやすくなるんですがねえ」
 少しでも風を取り込もうと全開した窓から入り込んでくる風も熱気を孕んでいる。気分だけでも涼を感じたいということだろう、自室に風鈴を吊るしている隊員が少なくないらしく、音色の異なる複数の調べが断続的に風に乗って届いた。
(音だけなら、断然、南部風鈴ですか)
 高く澄んだ清冽な音が長い余韻を漂わせながら空気を震わせ、抜群の清涼感をもたらす。だが、見た目も考慮すると江戸風鈴に軍配が上がると、喜助は感じていた。金魚や朝顔や花火が絵付けされた愛らしい風鈴が軒端に揺れているのは音と並んで、視覚的な涼しさをも与えるからだ。
 暦の上では、一応立秋は過ぎているので秋に当たるはずなのだが、体感季節は真夏である。草叢の虫にしても、興梠や鈴虫といった涼感と風情のある秋の音色は未だに聞けていない。暑苦しく、耳障りな擦過音を立てる虫ばかりがやかましく鳴いている。尤も、先ほどから安眠を妨げていたやぶ蚊は、ようやく蚊遣りから立ち上る線香の煙に仕留められたらしい。あの独特な羽音が聞こえなくなった。
(にしても、暑い…)
 腕を額に当てて嘆息すると、喜助はごろんと寝返りを打って体を横に向けた。先日、新調したばかりの寝茣蓙から青臭い藺草の香りが漂った。
「お金ならありませんよ。他を当たってください」
 そのまま、言葉を発すれば、くつりとくぐもった笑い声と共に、いきなり人の気配が背後に露わになった。
「易々と侵入を許すなど、檻理隊隊長にあるまじき失態じゃな」
「夜一サンだってことは分かってましたからねえ。敢えて放置したのですが、取り押さえられたかったですか?」
「まぁ、よいわ」
 蚊帳の裾をそっと持ち上げて、夜一はするりと中に入ってくると、いきなり喜助の腰に馬乗りになった。
「暑苦しいんですけど?」
 女を腰に乗せたまま、喜助は再び寝返りを打って仰向けの姿勢になった。
「うむ、確かに暑いのう。煮えそうで寝られたものではない」
「自分が眠れないからって、ボクを巻き込むのはご勘弁願いたいんですが?」
「散歩のついでに寄ったまでじゃ」
 得意の猫への変化で散歩していたのだろう。変化を解いた彼女はすっぽんぽんである。こんな夜更けに隊寮の庭をふらふら出歩いている隊員はまずいないし、いたとしても三席の部屋を不躾に覗くような真似はしないはずだ。それに、家系の特徴で褐色の肌を持つ彼女は暗闇ではその姿を沈める。蚊帳越しでは、覗いたところで彼女の肢体を捉えられるとは考えられないので、喜助は彼女の裸身はそのまま放置することにした。
 闇の中、彼女の黄玉トパーズの眸だけが炯々として、喜助を見下ろしている。
「暑いのに、もっと暑くなりますよ?」
「なに、運動した方がぐっすりと寝られよう」
 夜一は言ってのけた。声音は平静だが、眸には既に欲が揺らめいているのだから、最初からそのつもりで来たのだろう。
「淫乱ッスねえ」
と呟けば、
「あまり誉めるな。照れるじゃろ」
と返ってきた。
「夜一サンから迫ってきたんですからね。結界はお願いします」
「言われるまでもないわ」
 隠密機動総司令官と檻理隊隊長、二番隊隊長と第三席がわりない仲であると知られる分には、多少外聞が悪くとも問題はない。だが、四大貴族の一、四楓院家当主である姫君がいくら護廷や隠密起動での地位があるとはいえしがない下級貴族出の男と淫らな関係にあるのが明るみに出るのは醜聞だ。
 男の念押しに分かっていると頷いた彼女は、変化を解いた時にすでに結界を張り巡らせるのを済ませてしまっていた。無論、男もそれに気付いている。気付いた上での念押しだ。

 喜助はおもむろに両の腕を持ち上げると、彼女の双丘を鷲掴んだ。彼女ほどの実力と技量ともなればほとんど関係ないとはいえ、隠密機動が諜報と暗殺を主業務としていることを顧みれば、彼女の胸はいささか発達しすぎのきらいはある。ゆるゆると揉みながら、
「重くないですかあ?」
とのんびりと問えば、
「肩が凝って敵わん」
 女は面倒くさそうに応じた。夜着の帯が解かれ、ぐいと前合わせを広げられたのに呼吸を合わせ、喜助は女の胸を掴んだままで腕を引いた。引っ張られた夜一は何の抵抗もなく、彼の胸元に倒れ込んで来た。
「寝茣蓙を新しゅうしたか?」
「あはは、分かります?」
「分かるわ。藺草のよい匂いがする」
 どうやら、新しい寝茣蓙は姫君のお気に召したらしい。彼女は機嫌よく、我から男に口接けた。ぬるりと入り込んで来た舌を、喜助のそれが絡め取る。猫に変化するのが影響しているわけでもあるまいが、常の女よりもざらつきの強い夜一の舌をこそげるように舐めれば、合わさった唇の隙間から、
「…ふ…ン…」
と湿り気を帯びた喘ぎが零れた。夜一の左手が喜助の胸をまさぐり、乳首を摘み上げた。女の胸と同様に男の乳首だとてしっかりと性感帯である。捏ね繰り回され、軽く爪を立ててひっかかれ、喜助の情欲も否応なく高ぶっていく。一方、夜一の右手は喜助の裾を広げ、下帯を解きにかかっていた。
 脱がせるまでもなく最初から裸身の夜一の秘所からは、すでにじんわりと愛欲が滴っており、丁度そこに触れている喜助の夜着には淫蕩な湿り気が移っていた。
「すっかり元気になっておるのう」
 喜助のしっかりと勃ち上がった牡を、夜一は下帯の布越しに撫で上げる。室内が暗くなければ先走りの染みも確認できるのだろう。漏らしたように濡れている個所を指先に力を込めて押さえると、
「っ!」
と喜助はわずかに息を呑んだ。刺激に再び先走りが滲み出したのに、
「我慢が効かぬ身体じゃのう」
と夜一は嘯く。
「どっちが?」
 喜助は右手をすっと下げて、ぐずぐずに濡れそぼっている夜一の秘花に触れた。
「碌に触れる前から、こんなにどろどろじゃないですか」
「暑かったからの。汗じゃ」
「ほう? 因みにボクのも汗です」
「なるほど」
 喜助は指を三本、一気に押し挿れた。上に倒れ込んだままの夜一の身体が、瞬間、びくんと跳ねた。
「おや、感じましたか?」
「いきなりじゃ、仕方あるまい」
 応えながら、夜一は解いた下帯を引き抜いた。
「せっかくの新調した寝茣蓙が汚れてしまうのう」
 くすくすと淫靡に、夜一は笑う。
「寝茣蓙を買いなおすのに困らない程度の給金は頂いていますから」
「なんなら、最高級の寝茣蓙を進呈しようか?」
「ご遠慮します」
 軽口を叩き合いながら、喜助は右手の指を抜き差しすることに余念がなかったし、夜一は握り込んだ喜助のモノを巧みな指使いで扱いていた。
「っく…」
 既に覚え込んでしまっている、夜一の感じるところを少し力を込めて擦ってやると、彼女は息を詰めて痙攣した。直後、お返しとばかりに剛直を強い力で絞められ、
「うっ」
と喜助も息を詰める。
「さっきのところが良い。もっと強く」
 姫君の命ずるままに、喜助はさらに指先に力を込めて、夜一の中を刺激する。彼女の粘膜がぐぐっと締まって、喜助の指を絞った。彼女の耳朶を食んで、
「一回、イっときます?」
と喜助は提案してみた。
「じゃな。おぬしも一度、出しておけ」
「了解です、総司令官」
「身体を入れ替えるぞ」
「はい」
 体のバネを効かせて上体を起こした夜一は、一瞬後には軸を回転させて、前後を反転させていた。そのまま、尻を喜助の顔の方へ突き出しながら上半身を屈め、二つ巴の体位を取る。喜助の腕が夜一の腿に廻り、僅かに尻を持ち上げた。直後、べちゃべちゃとわざと下品な音を立てながら、喜助は夜一の谷間を舐めまわし、愛液を啜った。喜助に遅れて、夜一も男の性器を咥え込んだ。どんぶり飯をぺろりと何杯も平らげる口いっぱいに、張り詰めた男の肉を頬張った彼女は、あたかも極太の千歳飴を舐めるかのように舌を肉の表面に這わせて、こそげるように動かした。
 褐色の姫君は秘花も色濃い。西洋の菓子にチョコレートというものがあるが、夜一の秘部は正にチョコレート細工のようだ。そこに埋め込まれた大粒の南洋真珠を喜助は舌で転がした。さらに歯茎との間に挟み込んで、ぐっと舌先で押してやると、夜一は軽く身悶えた。対抗するかの如く、彼女はべろんと彼のものを舐め上げた。奥まで頬張っていた彼のモノを浅く咥え直すと、先走りの苦い液を絞るようにして飲み込んだ。それから、再び、彼女は深く喜助の肉棒を口一杯に押し込んだ。夜一の反応を窺いながら、南洋真珠をしゃぶっていた喜助だったが、よい頃合いだと軽く歯を立ててみた。途端にびくびくと、夜一は思いがけず大きく痙攣した。拍子に彼女の歯が軽く喜助のいきり立ったものを噛んだ。刺激に、ずんと喜助の肉が太くなり、一気に青臭い白濁液が噴出した。ほとんど同時に、喜助の顔面にぴゅ、ぴゅ、と液体が跳ね飛び、喜助の上で夜一が硬直した。
 絶頂と射精が同時だったせいで、さすがの隠密機動総司令官も対処できなかったらしい。男の牡を慌てて口から抜き取ると、彼女は盛大に咳き込んだ。唇に当てた手の隙間から、ぼたぼたと白濁液が零れ落ち、喜助の股間や寝茣蓙に散った。
「大丈夫ですかぁ〜」
 体を起こして背中を擦ってやれば、
「早すぎじゃ、たわけもの」
と涙目で睨まれた。
「もうちっと我慢せい」
「すみません」
 喜助はへらりと笑った。
「この頃、めっきり我慢が効かなくなって。疲れているんでしょうかね?」
「疲れるほど、こき使った覚えはないぞ。任務以外で疲れている分には知らぬが」
「夜一サンこそ、あれくらいでイってしまうとは思いませんでした。欲求不満ですか?」
「かもな。阿呆の相手は疲れる」
 数日前、彼女は一族の者が持ち込んで来た見合いに臨んだ。相手は身分こそ四楓院家に相応しかったようだが、人物は足りなかったらしい。彼女が「阿呆」とこき下ろした一言からも、それは知れた。自由でいたい夜一にしてみれば、婚姻自体が気に食わないことこの上ないのだろうが、それでも四楓院家当主としての立場は弁えている。いずれは名だたる貴族と結婚し、子を為すのが彼女の責務だ。
「結婚は構わぬが、せめてましな男を寄越して欲しいものじゃ」
「夜一サンのお相手は月詠つきよみサンが吟味中でしたでショ?」
「ごり押しで横やりを入れてきおったのじゃ。尤も、相手の阿呆ぶりには月詠の方が呆れておったからのう。横やりを入れた者ともども、今頃、こってりと絞られておろう」
 愉快そうに夜一は笑った。彼女の異母弟である月詠は妾腹である上に、隠密機動の頂点に立つには霊力が不足していたこともあって、表に出ることはほとんどない。だが、権謀術数渦巻く貴族社会における政治的手腕という点では四楓院家の長い歴史の中でも稀にみるほどの才覚があり、夜一の影で宰相として軍配を握っていた。異腹ながら、夜一と月詠の姉弟仲は悪くなく、夜一は弟を信頼していた。それゆえ、月詠が選んだ男となら、四の五の言わずに結婚する覚悟を決めていたのだ。現在の四楓院家で本当に怒らせてはいけない人物は、実は夜一ではなく月詠である。その彼のすることに横やりを入れた挙句、夜一から阿呆と罵られるような人物を推挙した縁戚は、きっと今頃、背筋の凍るような思いをしていることだろう。
「この話はもうやめじゃ」
「そうッスね」
 喜助は後ろから夜一を抱え込むと胸元に引き寄せた。彼女の尻に喜助の肉の刃が当たって、彼女はにやりと歯を見せて笑った。
「欲求不満は喜助もじゃろう? もうこんなに元気になりおって」
「まだまだ若いッスから」
「せいぜい奉仕しろ」
「おおせのままに」
 密着した夜一の身体は汗と愛液でぬめぬめとしていた。放射される彼女の熱気と室内にこもる蒸し暑さが混じり合って、まるで蒸し風呂で抱き合っているようだ。少しくらくらするのは熱気に中てられたか、官能に酔ったのか。左手で胸をまさぐりながら、唇を耳朶から首筋に這わせ、右手で秘部の熱帯雨林を探る。ミルクチョコレート色の胸の突起が刺激に反応してぷっくりと充血し、セミスウィートチョコレートに変わっていく。

 先ほどまで喜助に張り合っていた夜一だったが、彼が十二分にその気になったのを確認したところで奉仕させることに方針転換したとみえる。時折、彼の肌に指を滑らせる他は一切何もせず、ひたすら彼の愛撫に身を任せていた。
「夜一サン、ここ、好きでショ?」
 囁きながら、乳輪をひっかくように刺激してやると、
「もっと強くせい」
とせがまれた。
「道具、使います?」
「この間の試作品のアレか?」
「の改良版です」
「うむ、苦しゅうない」
 彼女を抱えて愛撫したままで、尻だけでいざって小箪笥に寄ると、彼は引き出しの一番下から棒状の器具を取り出した。先端にいぼ状の突起がいくつもあるそれの握りの部分を操作すると、ブゥゥーンと虻の羽音に似た音を響かせながら、棒が小刻みに振動を始めた。先端を夜一の胸に触れさせ、少し力を込めて押し付けると、
「…んン!?」
と彼女の体が跳ねた。
「気持ちいいですか?」
「悪くない」
 夜一は嘯いた。
「は…ぁ…。前より…当たりが…、んぁ…柔らか…い…」
 感想を述べる間に漏れる吐息が、艶を帯びた。
「樹脂を更に柔らかくして、振動の回転数を上げました」
「…突起も…、ンン…違って…おった…ようじゃ」
「当たりです。いぼを少し大きくして、表面にも細かい凹凸を施しました」
「…上…出来…じゃ…」
 うっとりと刺激を受け入れていた女は、やがて、
「…反対…側も…じゃ…」
と命じた。喜助は棒を反対の乳房に押し当てて、ゆっくりと渦巻きを描くように動かした。右手の指はすっぽりと彼女の濡れそぼった谷間に飲み込まれ、抜き差しを繰り返している。彼女の秘部は滲み出る愛蜜ですでに洪水の態を示していた。溢れた淫水は喜助の腿を伝って寝茣蓙に吸い込まれていた。
「…そろそろ、…来やれ…」
 指や道具では物足りなくなったのだろう、大きく腰を蠢かせた夜一が命じた。
「その前に…、これを挿れてみましょ?」
 喜助は右手を谷間から抜き取ると、振動を続ける棒を代わりにずぶりと突き入れた。
「ひゃ…あっ、…っく…」
 人の手ではありえない微細な振動による刺激が、粘膜をさざ波のように波打たせ、夜一の身体は意思に反して強く痙攣した。
「どうです?」
「…う…、…いい…」
「気に入りましたか?」
「…振動…は良い…。じゃが…」
「ご不満点は?」
「ン…、ん…太さと…」
「ああ、細すぎますか?」
「硬さ…」
「ふむ?」
「ここに…挿れるなら…、は…ふ…ン、…全体を…樹脂で…」
「ああ」
「…根元…、痛…い。そこは…好かぬ」
「なるほど」
 この愛撫棒は太さは親指ほどであるし、全体は金属棒で先端にだけ樹脂を被せてある。そのせいで、入口付近が金属で直接擦られて痛いのだろう。喜助は頷くと棒を抜き取った。道具をぽいと抛り捨てると、喜助は限界まで張り詰めた己の剛直の先端を、夜一の火陰ほとに押し当てた。
「早う…」
「はい」
「…来やれ」
 先ほどまで粘膜を震わせていた刺激が恋しくて、夜一は喜助をせかした。身体が、息が、今にも発火しそうなほどに熱い。
 ずぷん、と重たい音を立てて、喜助の肉刀が女の火陰を切り裂く。待ち望んでいたものを迎え入れた女はざわざわと内部を蠢動させて、蟻地獄のように男を内部へ内部へと引き込んだ。
「うっわ、熱うっ!」
 夜一の火陰は火山口さながらだった。煮えたぎるマグマに喜助の楔が熔かさせるのが先か、火山が噴火するのが先か。ぐいと突き上げると、夜一は心得たように腰を大きく捻った。
 すでにパンパンに張り詰められていたものが、さらに膨張し、熱を持った気がするのは、夜一にぎゅうぎゅうと容赦なく引き絞られたせいだ。
「ちょ、痛い…」
と呟けば、
「我慢せい」
と彼女自身が切羽詰まった表情を浮かべて、返して来た。
「気持ち…いいですか?」
「…悪く…ない…」
 一呼吸置いて、
「いい」
と言われた。両掌で彼女の豊満な乳房を包み込み、強弱をつけて揉みしだく。背中に這わせた唇で膚を吸い上げると、
「…あ…っ」
と甘い吐息が転がり落ちた。
「ん…、もっと奥じゃ」
「分かってます」
 喜助は夜一の下から足を引き抜いて、膝立ちになった。同時に抱き込んでいた胸を放すと、彼女は猫科動物の瞬発力で身体を前に投げ出し、四つ這いの姿勢を取った。喜助は腰を前後に打ち付けた。阿吽の呼吸で、夜一も尻を前後に動かすと、奥までの打ち込みとぎりぎりまでの引き抜きが繰り返された。
「…夜一サンっ! イっていいですか?」
「…好きに…せい…!!」
 さすがに夜一も限界だったのだろう。それだけを叫び返した直後、四肢を突っ張らせて絶頂した。一拍遅れて、喜助の精が夜一の胎内に渦を巻いて迸った。

「無茶苦茶…暑くなりましたね…」
 濡れそぼった髪が額に張り付き、そこを伝って汗がぽたりと寝床に滴った。闇に沈むはずの夜一の膚は汗みずくに塗れているせいで、僅かに室内に入り込んで来た月光を反射してぬらぬらと輝いている。
「身体がべとべとで気持ちが悪い」
 総司令官に不満そうに命じられ、
「少々お待ちを」
と喜助は裸のままで身を起こした。辛うじて引っかかっていた夜着を邪魔くさそうに床に落とすと、蚊帳から抜け出して風呂場に向かった。
 少ししてから、喜助はぬるま湯を満たした桶と手拭いを持って戻ってきた。くたりと気怠るげに弛緩している夜一を抱え起こし、固く絞った手拭いで丁寧に身体を拭き清めてやる。尊大な姫君は男の奉仕を当然とばかりに、身を任せていた。
 先に彼女を清めた後、喜助は自分の全身も拭き上げた。ついでに、寝茣蓙の表面も軽く拭った後、少し考えてから天地を逆にして、敷き直した。
 ふぁぁ、と夜一が伸びとともに大きなあくびを漏らした。
「疲れた。少し眠るぞ」
「そうですね。ボクもちょっと眠くなりました」
 運動した方がぐっすり寝られる、という夜一の言葉はあながち間違いではなかったらしい。一人用の寝具に二人並んでいれば暑苦しいことこの上もないのに、それさえ感じられぬほどに呆気なく、二人は睡魔に捕らわれた。

 喜助が目覚めた時、すでに傍らに夜一の姿はなかった。
 彼女が出て行ったのにも気づかぬほどに眠り込んでたのは、隠密機動分隊長としても、二番隊第三席としても失態だ。きっとちくちくと嫌みを言われることだろうと、喜助は苦笑を零しながら伸びをした。

******************************************

 夏の夜の夢

 8周年感謝企画第7弾「夏の夜の夢」は、イギリスの某文豪を土足で踏みにじるようなエロ小噺になってしまいました。いや、えーっと、文豪を頭から追い出すと、このタイトルってエロを連想させませんか?(同意を求めるな)
 まぁ、私がしばらく裏系の話を書いていなかったので、がっつりエロい話を書きたい発作にみまわれていたせいもなきにしもあらず。多分、喜夜になったのは一番遠慮なく書けるからだと思います。拙宅のCPは割と清く正しく一途な感じでお互いを想い合っているパターンに嵌っています。管理人がそういうのが好きなもので。しかし、喜夜だけは爛れた(笑)関係の設定なので。ええ、道具を使うエロは初書きです。
 時間軸は喜助氏が二番隊第三席で、檻理隊隊長ということからも分かる通り、十二番隊隊長就任よりも、もちろん追放よりも前です。大体、百十五年から百三十年前くらいを想定して書きました。
 それから、原作では「夕四郎」なる夜一さんの可愛い系の弟くんが公式に存在していましたが、拙宅はすっぱり無視してます。月詠氏をさんざん作品に使いまわしましたから、今更軌道修正は出来ません。うん、うち、パラレル尸魂界だから。(と開き直る)
 タイトルのご提供はyukiさま。エロに走ってしまったことは申し訳ありませんでした。

駄文倉庫に戻る
トップへ戻る
2016.09.05