逢いたくて、会いたくて


 真夜中に目が覚める。
 天井が近い。
 とても不愉快な夢を見ていた気がするのだが、夢の内容は思い出せなかった。
 天井が近いのは、ここが自分の寝室    三番隊の隊長舎だからだ。いつも布団を敷きっぱなしの万年床にしているギンは、そのことで絢女からやんわりとであるが、ずいぶんと小言を言われた。ギンにしてみれば、寝に帰るだけの隊長舎のしかも寝間であるのだから、布団を敷きっぱなしの方がすぐに横になることが出来て合理的だと感じるのだが、絢女はみっともないし、畳の風通しが悪いと譲らなかった。ならば、と寝具を片付ける必要のない寝台を購入したのは、三月前のことだ。
「これなら、布団、上げへんでも、絢女も文句ないなぁ?」
と勝ち誇ったギンに、絢女は呆れつつも大笑いした。
 絢女との共寝を前提に選択した寝台は、現世でいうところのキングサイズ。縦横の長さがほぼ等しい正方形に近い形状だ。絢女は当初、この大きさにも、
「二人でも寝られるようにって言うけど、いくらなんでも、こんなに広くなくたっていいでしょう?」
と呆れ返っていた。だが、もともと珍しいものに興味旺盛なせいか、すぐに、
「この大きさだと、でんぐり返りが出来るわ」
と言い出し、寝台の上で無邪気に前転を披露してみせた。これにはギンの方が大笑いしたものだ。
 二人で眠っても充分に広い寝台に、ただ独りで横たわっていると、薄ら寒さを感じる。この寝台にはヘッドボードに小さな棚があり、そこにギンは伝令神機を置いている。もぞもぞと手を伸ばして、伝令神機を取り上げたが着信はなく、彼は溜息をついた。
 絢女は現在、瀞霊廷に不在である。辺境の遠征に出ているのだ。
 現世で亡くなった魂魄は流魂街に送られる。流魂街は瀞霊廷に近く治安も極めて良好な一桁の街区から、ギンや乱菊や絢女が必死になって這い上がって来た吹き溜まりのような最貧区まで、瀞霊廷を中心に同心円状に広大に広がっているが、辺境区域は最貧区の更に外側に存在している秘境である。尸魂界送りとなった魂魄が辿り着く先は運任せといえ、少なくとも流魂街に送られるのは間違いなく、辺境には本来、魂魄はいないはずである。だが、最貧区から逃げ出した魂魄が稀に辺境地域に住み着くことがあり、完全に無人ではなかった。そして、困ったことに、辺境に住み着いた魂魄は輪廻の流れから外れてしまうのだ。また、最貧区に出没する虚の中には、死神の目が届きにくい辺境を根城にしているものもあった。この為、護廷では各隊の持ち回りで三年ごとに辺境への遠征を行い、プラスの保護とホロウの討伐を実施していた。もちろん、辺境自体が広大なので、一度に全部を廻れるわけではない。辺境はさらに二十五の区画に分けられて、遠征の度に一区画ずつ、順に廻って行くのだ。従って、ある一区画に遠征が入った場合、同じ区画に次に死神が入るのは七十五年後ということになる。
 今年は辺境遠征の年に当たり、輪番は五番隊だった。この為、大規模な遠征隊を組んで、一ヶ月半の予定で、絢女は辺境に赴いたのである。遠征の間、大幅に人員が減ってしまう五番隊の通常の業務は、各隊が分担して行っていた。
 辺境は霊波の状態が悪く、補給も充分に行えないことから、通信も必要最低限に限られる。出発の前に、絢女からは、留守居の三席に対する定期通信以外には連絡出来ないと伝えられていた。また、ギン自身も過去に幾度か辺境遠征したことがあり、私的な通信はまず無理だと承知していた。だから、絢女から連絡がなくとも仕方がないと充分に納得している。納得しているが、それでも、彼女からの連絡がありはすまいかと、ついつい伝令神機を確認してしまうのだ。
 絢女が瀞霊廷を出立してから、二十一日めの夜だ。彼女が予定通りに戻って来るにしても、まだ二十以上の夜を超えなくてはならない。こんなことなら、彼女が遠征から戻ってから寝台を購入するのだったと、広すぎる空間で無意味にごろごろと寝返りを打ちながら、ギンは考えた。
 絢女が行方知れずになっていた四十五年間を思えば、たかだか一月半の不在などたいしたことはないと高を括っていた。私的な連絡は出来なくても、隊の留守居とは定期連絡をつけており、その内容はいちいち回覧文書で報告されて各隊に共有されるのだ。彼女が無事なのも、順調に遠征の日程を消化していることも承知している。生死も不明だった、あの時とは違う。分かっているのに、不安と焦燥が拭えないのは、なまじ、絢女をこの手に得てしまった代償だろうか。

 声が聞きたい。
 会いたい。
 抱きしめたい。

 想いは募ってゆく。
 どうにもこうにも、眠れそうになくて、ギンは諦めて起き上がった。
 絢女が出立した日は三日月だった。夕刻の早い時間から西の空に弓のような月が輝いていた。
 今宵は二十七日月。皆が寝静まった夜半に東の空から昇った、絢女が出て行った晩とは逆向きの弓が、ようやく瀞霊廷の家々の屋根よりも高い位置にかかった頃合いだ。この月が更に細って新月を迎え、満ちて満月となり、もう一度欠け始める頃に絢女は戻ってくるのだと思うと、遅々と進まぬ月の満ち欠けが何とも恨めしかった。
 縁側に煙草盆を持ち出して、一服する。煙が苦手な絢女が噎せないように、縁側で一服するのが癖になってしまった。彼女はいないというのに、こうして寝間を出て、月見をしながら煙草を吸っている自分に気付き、ギンは苦笑を零した。
 ふう、と紫煙を吐き出し、ギンは煙管きせるを眺めた。この煙管は一昨年の誕生日に絢女から贈られたものだ。北流魂街にある餝職人の集落に住まう、「煙管名人」の異名を取る職人の作である。羅宇らう
*1 に斑竹を用いた銀細工の煙管で、雁首に跳ねる狐が細工されているのは、注文主である絢女の洒落だろう。吸い口部分に金張りを施したこの煙管は、流石に名人の作だけあって、たいそう具合が良く、煙草が一際美味く感じられるので、すっかりギンの愛用品となっている。
 絢女は遠い辺境の野営地で、ちゃんと眠れているだろうか。それとも、ギンと同じように眠れなくて、この月を眺めているだろうか。
 辺境遠征は過酷だ。きちんと体を休めていて欲しいと願う反面、この月を絢女も見ていればいいと想う。
(何やろなぁ。どこの乙女や?)
 自らのセンチメンタルな思考に、再び、ギンは苦笑した。
(会いたいなぁ…)
 会えない。声さえ聞くことが出来ない。
 絢女と結ばれてから、こんなことは初めてで、ギンは自分の気持ちを持て余した。
(こんなで三年後、ボク、遠征に行けるのんか?)
 遠征の輪番は番号の大きい隊から降順に廻ってくる。ただし、救護と補給という特殊任務を担う四番隊は輪番から外れていた。その代わりに、遠征の都度、それなりの実力を持つ上位席官を複数名含む小隊を遠征に同行させているのだ。従って、三年後の輪番は三番隊が当たる。隊長が総隊長を兼務している一番隊や、同じく、隠密機動総司令官兼務の二番隊のように特殊な事情がない限り、通常、隊長が指揮を執り、副隊長が同行した上で、三席が留守番という編成で遠征は実施されるので、三年後の遠征では、ギンは指揮官として自ら辺境に赴かなくてはならない。立場は逆になるが、やはり絢女に会えず、連絡さえ出来ない状況が一ヶ月半続くのだ。
(ああ、けど…。遠征に出とる方が気ィが楽かしれへん)
 一区画といえども、辺境は相当に広い。また、稀に魂魄が暮らしていることがあるとはいえ、基本的に人里のない秘境である。うっそうとした原生林や、不毛の砂漠地を超えねばならない。日程の一ヶ月半のうち、半月は辺境への往き帰りの旅程に費やされるから、実質的な見廻り期間は一月だ。たった一月で広大な辺境区画を廻るのは、かなりの強行軍である。くたくたに疲れ切ってしまえば、こんなふうに絢女恋しさに苛まれずに済むかもしれない、とギンは思いを巡らせた。
 細い月を、ギンは恨めし気に見上げる。さっさと肥え太り、満月になればいいのに、と無茶なことを願った。

 十番隊執務室を訪れたイヅルは、乱菊に書類と一緒に花束を手渡した。
「あら、綺麗ね。どうしたの?」
 あやめに、花菖蒲、杜若に西洋アイリスなどが束ねられていて、突然の贈り物に乱菊は目を丸くしている。
「お裾分けです。三番隊には飾りきれないので」
とイヅルは苦笑いを浮かべた。
「飾りきれないって?」
 不審気に、乱菊はイヅルを見返す。
「今朝、市丸隊長が瀞霊廷中の花屋から、あやめというあやめを取り寄せたんです。すごいですよ、今、三番隊は。執務室はもちろん、玄関にも、席官室にも、階段の踊り場にも、ありとあらゆるところにあやめの花が飾ってありますから。花瓶が足りなくて飾りきれないので、四番隊や八番隊のように喜んでくれそうなところにお裾分けしているんです」
 イヅルの返答に、乱菊と冬獅郎は目を見合わせた。
    もしかして、ギン、けっこうキてる?」
「もしかしなくても、けっこうキてます」
とイヅルは言い切った。
 絢女の名は、あやめの花に因んでいる。これは絢女が辛うじて抱えてきた現世の記憶である。流魂街で乱菊と共に生活していた頃、誕生日の話題になった時に話してくれた。
「だから、多分、あやめの花が咲く頃に産まれたんだと思うの」
というのが誕生日を問うた乱菊に対する絢女の返答で、日付までは覚えていないということだった。そこで、次の初夏にあやめの一番花を見付けた日を誕生日にしようと乱菊が提案したのだ。そうして巡った翌年の皐月十一日、乱菊があやめの一番花を発見して絢女に贈った時から彼女の誕生日は定まった。
 同じ響きの名を持ち、この花が咲く頃を誕生日としているせいか、絢女はあやめ類がとても好きだった。ギンもまた、あやめの花を最愛の女性に重ねている様子で、彼が絢女に贈る装身具や着物の類にはあやめや杜若の意匠が施されていることが多かった。
 絢女が辺境遠征の為に瀞霊廷を出立してから、もう間もなく一月である。ギンは絢女に会えない寂しさを紛らわせる為に、同じ名の花で囲まれることを思い付いたのだろう。
「それで、あいつ、真面目に仕事をしてるのか?」
 冬獅郎の問いに、イヅルは頷いた。
「逃亡もせずに書類仕事をこなして下さっているので助かります。ただ、かなり鬱陶しいですけど」
「はぁ?」
一刻いっこく
*2 に一遍くらいの割りで、あやめの花をじーっと見つめて深い溜息をつかれるんです」
 再び、乱菊と冬獅郎は顔を見合わせた。
「…それは…」
「しみじみと鬱陶しそうね」
と乱菊は同意した。
 口調は軽口を装っているが、乱菊は本心では心配だった。ギンはかつて、持って半月と言われる過酷な色絶無の刑罰を一月の長きに渡って耐え抜いて、奇跡の生還を果たした。その一事で、護廷のほとんどの者はギンのことを鋼の精神の持ち主だと見做している。だが、その見解は半分だけ正しくて、半分は誤っていた。確かに、ギンの意志力は強い。けれども、硬い金剛石ダイヤモンドが案外、衝撃に弱いように、ギンもまた心の奥底に脆い部分を秘めていた。しかも、耐え抜いたとはいえ、色絶無の後遺症は深く、彼は未だに精神的に不安定になる夜があるらしい。そんな彼の心の支柱は、絢女だ。彼女の為になら、ギンはどこまでも強くなれる。実際、乱菊は色絶無を耐え抜いたのも、絢女の存在あってのことだと確信していた。色絶無に耐え切れずに彼が廃人になってしまったら、絢女は全ての幸せを諦めてギンの世話に身を捧げるだろう。だから、彼は狂うわけにはいかなかったのだ。もし、絢女の存在がなかったら、彼は過酷な刑に負けて精神を明け渡していたはずだ。
 ギンの不安定さは、傍にいる絢女が一番よく分かっていた。彼女は遠征出発前に、ギンのことに気を付けて欲しいと乱菊に頼みに来た。
「…前みたいに同じ隊だったら、一緒に遠征にも行けたんだけど」
と絢女は溜息をついていた。
 イヅルが十番隊を辞してから、冬獅郎が言った。
「松本、今晩はあいつの様子を見に行ってやれ」
「いいんですか?」
 冬獅郎は頷いた。
「姉さまに頼まれているからな。それに、あいつはおまえの兄貴みてえなもんだろう? 心配なら俺に遠慮しなくていいんだ」
 乱菊は知っている。あくまでも、絢女の為、乱菊の為という態度を貫いているが、冬獅郎自身もギンを案じていることを。ギンがからかいたがるものだから、冬獅郎は素っ気ない態度を崩さないが、二人の間に流れる空気はもうとっくに暖かいのだ。
「ありがとうございます。お言葉に甘えてちょっと行ってみます」
と乱菊はふんわりと微笑んだ。

 表面上は、ギンはいつもと変わりなく見えた。
 だが、それはギンの虚勢だ。人に弱味を見せるのが嫌いで、カッコつけの幼馴染の厄介さをよくよく承知している乱菊には、その見栄は通用しなかった。
「ちゃんとご飯食べてるの?」
「うん、食べとるよ」
「そうは見えないけどね? お酒で誤魔化しているでしょう」
 看破した乱菊に、
「かなわんなぁ」
とギンは苦笑する。乱菊は彼にぶら下げてきた風呂敷包みをずいと突き出した。
「…何?」
「乱菊姐さんの手料理よ。心して食べなさい」
    おおきに」
「何よ、その間は?」
 乱菊は目を眇めてみせた。
「ギン。ちゃんと食べなきゃ。帰って来た時にあんたが痩せ細っていたら、絢女が心配するでしょう?」
 彼の身体の為と説得するよりも、絢女を引き合いに出した方が効果が高いことを乱菊は心得ていた。案の定、ギンは、
「そやね」
と頷いた。
「一人で食べるのも寂しいでしょ? 今日はあたしがお相伴してあげる」
「冬獅郎はん、放っておいてええのん?」
「隊長は今日、浮竹隊長や京楽隊長と飲みに出ているから、夕飯はいらないの。『絢女がいなくてあんたが凹んでいないか、様子を見に行く』ってちゃあんと断っているもの、大丈夫」
「そうか。ほんなら、好意に甘えて付き合うて貰おかな」
 乱菊は手早く汁物をこしらえ、重詰めの弁当を広げた。二人、差し向かいで食事をしながら、
「何や、久しぶりやね。乱菊と二人でご飯食べるの」
とギンがしみじみと言った。
「そうね」
「子供の頃に返ったみたいやね」
「子供の頃からすると、夢みたいに豪勢な食事だけどね」
「そやなぁ」
 ままごとのように、と呼ぶには余りに過酷だった最貧区の日々。だがどん底の場所でも、ギンと乱菊は乏しい食料を分け合って、助け合って生きてきた。こうして、二人で食事をしていると、あの頃の絆が甦って来るようだ。傷みかけの握り飯の半分こ。ギンはいつも傷みの少ない方を乱菊に渡した。乱菊の作った握り飯に傷んだところなんてないけれど、米も塩も極上のものを使用した文句の付けようのない味だけれど、噛みしめていると、あの頃に口にした饐えた米の記憶が甦った。傷みかけの飯でもご馳走で、二人して、
「おいしいね」
と微笑み合いながら食べていた。乱菊がいたから、貧しかったけれども惨めな生活ではなかった。むしろ、彼女を置き去りにしてからの方が荒んでいたと、ギンは思い返した。
 久しぶりにきちんと味わって食事をした気がした。身体が資本の死神稼業の、しかも隊長職である。食事は一応、規則正しく摂るように心がけてはいたが、何を食べても砂を噛んでいるように味がなく、半ば酒で流し込んでいたのだ。
 食事を終えた後、乱菊は小さな紙包みをギンに渡した。
「何?」
 怪訝に首を傾げたギンに、
「卯ノ花隊長が処方して下さった睡眠薬よ。いよいよ眠れないようなら飲みなさい、て言付かってきたの」
と乱菊は答えた。
 隊長格に睡眠薬が処方されることは滅多にない。薬を使って無理矢理に深く眠ってしまったら、緊急事態に対応できない可能性があるからだ。しかし、不眠が重度になれば、疲労が蓄積して、反応も鈍くなるし判断力の低下を招く。指揮官の意識水準の下降もまた、緊急時に重篤な結果を招く危険を孕んでいるのだ。
「ただし、薬を使う時は必ず吉良に連絡すること、ていうのが卯ノ花隊長の注意よ」
「ああ、うん…」
「それと、ね」
と乱菊は続けた。
「これはうちの隊長からの伝言。それを使って眠る時は、隊長にも連絡するようにって。隊長の出動が要請されるような緊急事態の時は、代わりに出るそうよ」
 ギンはほろ苦く笑った。
「若さんにまで迷惑かけられへんよ」
 彼の言葉に、
「馬鹿ね」
と乱菊は返した。
「隊長は迷惑だなんて思ってないわよ。うちだって、ほら、あたしの誕生日に揃って非番を取る時とか、ギンや絢女に緊急時対応を頼んでいるじゃない。こういうのは、お互いさまっていうのよ」
「けど…」
「ギン。あんたが人に頼るのが苦手で、弱味みせるのが嫌なのは、よーく知っているわ。だけど、あんたが不調で護れるはずの隊員を護れなかったら、悔やむのは他でもないあんたよ。それに、ギンだって絢女の性格は分かっているでしょ? あの娘の不在であんたが調子を崩して、挙句に怪我したり、重大な過ちを犯したりしたら、絢女は絶対に自分を責めてしまうわ。あの娘にそんな思いはさせたくないでしょう?」
 再び、乱菊は絢女の名を出して説得を試みた。ギンは掌に乗った薬包をじっと見つめた。
「まだ、大丈夫やよ」
と彼は薄く笑んだ。
「けど、いよいよあかんようになったら使わして貰うわ。その時には、言われたようにイヅルにも断るし、冬獅郎はんにも連絡するから…」
「約束よ」
と乱菊は念を押した。
 実際、今のところはまだ、どうしても眠れないというほどひどい状態ではない。眠りは浅くなっているし、眠ったら眠ったで不快な夢を見るせいか、寝起きは最悪だが、それでも、それなりに睡眠は取っているのだ。ただ、状態が徐々に悪くなっていることは自覚しているので、遠からず、睡眠薬に頼らざるを得ない事態に至るかもしれない。
「指切りする?」
 ギンの提案に、乱菊は一瞬、空色の眸を瞠った。けれども、すぐに小指を差し出してきた。
 子供の頃にやったように、小指を絡めて、
「指切りげんまん」
と呪文のような言葉を唱える。こうやって交わした約定を、ギンは絶対に守ると信頼している乱菊はそれ以上、くだくだしいことは言わなかった。

 外は雨が降りしきっている。
 寝台に腰かけて、ギンは卯ノ花が処方してくれた睡眠薬を見つめていた。
 絢女の帰還まで、あと七夜となった。それぐらいなら、薬に頼らずに凌げるのではないかと自分を励ましているが、ここ二日、ほとんど眠れていない現実に限界を感じ始めてもいた。平時なら、二日、三日の徹夜くらいどうということはないのだが、ずっと、浅い、切れ切れの眠りで疲労が溜まっていた体には、全く眠れない二晩はかなり堪えた。体は眠りを欲しているのに、心が眠りを拒んでいる。不愉快な夢は、とうとう具体的な悪夢となってギンを苛み始めたのだ。

     絢女が遠征先で横死を遂げる。

     夢の中で目覚めると虚夜宮ラス・ノーチェスの自室で、藍染が冷笑とともに「よい夢を見られたようだね」と嘯く。

     瀞霊廷の壁に、オブジェのように吊り下げられた乱菊や冬獅郎の遺体。

 このままでは身体が持たない、眠ろうと決心しても、悪夢がギンを眠りから追い出す。目覚めても、ここは現実なのかと、藍染の鏡花水月が作り出した眩惑の中に閉じ込められているのではないかと、疑心にかられて落ち着かない。
 薬を使えば、悪夢さえ入り込めないほど、深く眠れるかもしれない、とギンは思った。
 このところ、天気がぐずついていて、月を見ていない。だが、厚い雲の上で、望に向けて月は確実に肥えているはずだ。
「あと七つや」
 七つの夜と六つの昼を超えれば、絢女は戻ってくるのだ。
 ギンは溜息をついて、薬を棚に戻した。今晩はもう遅い。睡眠薬で眠る際には、イヅルと冬獅郎に連絡すると、乱菊に約束していた。けれども、二人に頼むにはすでに傍迷惑な時間になってしまった。
 一人きりの寝室に、微かに雨音が響く。小糠雨と呼ばれる、霧のように細かい雨粒が闇夜を濡らしていた。
 どうせ雨ならば、ばらばらと雨だれを響かせて、思い切りよく降ればよいのに。
 土砂降りの雨は鬱陶しいが、別段、嫌だとギンは思わない。だが、今宵のようにほとんど音を立てずに降る、静かな雨夜が苦手だった。それでなくても夢見が悪いというのに、こんな雨では確実に最悪な夢を見る。どうせ眠れないなら、いっそ開き直って、本でも読んで過ごそうかと寝台から腰を浮かせかけた時、伝令神機が鳴った。
 緊急事態か、と慌てて伝令神機を手に取ったギンは、表示された発信者の名に心臓が止まりそうになった。神機の画面には絢女の名が記されていたのだ。
 辺境遠征中は私的な通信は無理なはずだ。それとも、自分はいつの間にか眠ってしまっていて、これはいつもの悪夢なのだろうか。それならば、絢女の名で希望を抱かせて、聞こえてくるのは藍染の声かもしれない。不安と疑心暗鬼に責められながら、ギンはおそるおそる通話釦を押した。途端に、耳障りなノイズが響いた。
「…ギン…」
 だが、不快なノイズに紛れて、聞こえて来たのはまぎれもなく絢女の声だった。
「絢女、何で?」
 呆然としたギンの問いかけは絢女に届いたかどうか。
「…あ…た…、へんきょ…たつ…。も…すぐ…かえ…」
 ノイズに邪魔されてしかとは聞き取れなかったが、きれぎれの言葉から、絢女が「間もなく帰る」と伝えようとしているのが分かった。
「うん、もうすぐやね。帰り着くまで気ィ抜かんと、気ィつけてな」
 おそらく、ギンの声もとぎれとぎれにしか絢女には伝わっていないだろう。それでも、繋がっていると確かに感じることが出来て、ギンは胸が熱くなった。霊波の状態が悪いのか、一際、ノイズが大きくなった。絢女の声が聞き取れない。思わず、伝令神機を耳に押し付けた時、
「…あいしてる…」
 奇跡のように、その言葉だけ、途切れずにギンに届いた。息を呑んだギンが、
「ボクも」
と返すよりも早く、ブツと霊波が切れた。
 今のは夢だったのだろうか。
 だが、着信履歴には絢女の名が確かに残されていた。

     愛してる

 もう通話は切れてしまったのに、ギンの耳に絢女の告げた一言が響き続けていた。
 今晩は悪夢に邪魔されずに眠れる、とギンは確信した。絢女の声を届けてくれた、彼女の名が履歴に残る伝令神機をお守りのように握りしめて、ギンは寝台に横たわった。

 心、ここあらず。
 逃亡こそしていないが、朝からぼーっと窓の外を眺めるばかりのギンを、イヅルは今日ばかりは非難する気になれなかった。辺境遠征に出ていた五番隊の帰還予定日だ。一月半の絢女の不在は、予想を遥かに超える深刻なダメージをギンに与えており、塗炭の苦しみを乗り越えて、間もなく彼女と再会できると逸っている気持ちは理解できたからだ。それに、イヅル自身、片恋の相手である桃に、ずっと会えずにいたのだ。尤も、五番隊が瀞霊廷に帰り着くのは昼八つ
*3 頃らしく、まだ二刻ふたとき以上はある。
 ギンは時折、思い出したように書類に筆を走らせるが、長続きはしない。一枚、仕上げては外を眺め、また思い出して書類を仕上げては窓を見るということを繰り返していた。能率は極めて悪い。だが、常日頃、隊舎から逃げ出してふらふらされていることを顧みれば、取りあえず、執務室にいる分だけましだろう。
 昼を過ぎて、ギンは更に落ち着きがなくなった。蝶の姿が目に入る度に身を乗り出し、地獄蝶ではないと分かるとあからさまにがっかりしていた。今の季節は、地獄蝶に色合いや大きさが良く似た黒揚羽や烏揚羽が中庭をひらひらと飛んでいる。それを目にする度に、ギンは絢女の帰還を知らせる地獄蝶かと確認するのだ。
 だが、昼八つを過ぎても、地獄蝶は飛んでこなかった。間もなく夕の七つに掛かるかという頃合いに、漸く、五番隊からの地獄蝶が三番隊舎に姿を現した。だが、待ち望んでいた筈の地獄蝶は、遠征隊の帰還ではなく、帰還が遅れるという報せをもたらした。戻りが夜になるという、五番隊三席からの報告に、側で見ていたイヅルが気の毒に感じるほどがっくりとギンは気落ちした。それでも、単なる行軍の遅れであって、不測の事態が発生したわけではない。もうしばらく辛抱すれば、絢女は帰ってくるのだ、と気を取り直したのは流石であった。
 結局、その日、ギンが捌いた書類はほんの十枚ほどだった。むろん、残業する気は毛頭なく、彼は定時に隊舎を出た。
 隊寮への帰路を辿りながら、ギンは五番隊隊長舎で絢女を待とうかと思案していた。遠征から戻った時、部下は即、帰宅を許されるが、指揮官には一番隊に報告する義務がある。帰還した絢女は、まず一番隊に出向き、総隊長か、代理の雀部に簡単な報告を行うはずだ。それが完了したら、彼女は何はともあれ、隊長舎に戻るだろう。
 三十三年前の三番隊の遠征でも、それより更に三十九年前の五番隊副隊長時代の遠征でも、ギンは自室に戻るなり、ばったりと布団に倒れ込み、丸一日、昏々と眠り続けた。辺境遠征はそれほどに疲労困憊するものなのだ。もちろん、それは他の死神だとて同じである。四大貴族の誇りを胸に、威厳と気品を双肩に担いで、常に端然とした佇まいを崩さない白哉ですら、三年前の輪番での辺境遠征帰還後三日ほどは「まるで幽鬼のようだった」とはルキアの弁である。体力勝負なら右に出る者のいない十一番隊の更木でさえも、遠征後はひたすら大鼾で眠り続けていたという。
 絢女もきっと疲労は極みに達していて、戻ったら一刻も早く休みたいはずだ。疲れ切っている彼女は休ませてやりたいが、せめて、一目、顔を見るくらいの我儘は許して欲しかった。
「一目だけや…」
とギンは自分に言い聞かせた。五番隊隊長舎で絢女の帰宅を待ち受け、無事な顔を一目見たらおとなしく帰ろう。本音を言えば、朝まで共にいたいのだが、彼女の傍で理性が保つか、ギンは自分が信用できなかったのだ。
 間もなく三番隊隊長舎に帰り着くというところで、不意にギンの足は止まった。
「…何で?」
 彼は思わず呟いた。絢女の霊圧を感じたのだ。
 伝令によれば、帰還は夜の五つか、下手をしたら四つになるのではなかったか。今は暮れ六つで、教えられた帰還予定まで一刻いっとき以上あるというのに。それとも、絢女恋しさの余りについに幻覚症状が出たのか。だが、どんなに心を落ちけても絢女の霊圧は消えなかった。すぐ近く、他ならぬ三番隊長舎に彼女の霊圧を認め、ギンは一転、駆けだした。
 絢女は庭に面した縁側にいた。板敷の上に半身を横たえて眠っていた。
 その傍らに立ち尽くし、ギンは動けなかった。一ヶ月半の別離の後、ようやく会えた絢女。すぐにも抱きしめて、幻でも、夢でもないと確認したいのに、触れてしまったら泡雪のように消えてしまいそうな怖れに囚われたのだ。喜びと不安とで千々に惑う心のまま、じっと絢女を見下ろしていたが、彼女はいつまで経っても消えなかった。それに勇気を得て、ギンは漸く、おそるおそると彼女に手を伸ばした。指でそっと頬に触れると、確かな温みが伝わって来た。身を屈め、耳許で、
「絢女」
と名を囁いてみたが、彼女は目覚めない。
 やはり、疲れ切っているのだ、とギンは思った。だが、こんな縁側の板敷で眠っていては疲れを取るどころか、余計疲労してしまう。きちんと寝床で休ませなくては、と考えた。部屋に運ぶ為に彼女を抱えようと背中に腕を差し入れて半身を起こした時、ぴくり、と睫毛が動いた。目を伏せたままで睫毛だけが二、三度震え、それから、ゆっくりと双顆の琥珀が現れた。
 眠たげな眸がギンを捉えた途端に、はっきりと意志を持った。唇が弧を描き、絢女は、
「ただいま」
と告げた。
「おかえり」
 彼女の背に廻した腕を、ギンはそのまま自分の身体に引き寄せた。彼の胸に抱きすくめられた絢女は、自らも腕をギンの背に廻して、彼を抱きしめ返した。
「ただいま、ギン」
 もう一度、彼女は繰り返す。
「おかえり」
と、ギンももう一度返した。梔子の香りが鼻孔をくすぐり、彼は絢女が戻って来たことを心の底から実感した。
「夜中にしか戻れへんて連絡があったから…。幻覚見とるかと思た」
 ギンが疑問を述べると、
「ごめんなさい」
と絢女は謝った。
「びっくりさせたくて、ギンにだけそう伝えるように頼んだの。予定よりちょっと遅れたのは確かだけど、さるの下刻には戻っていたわ」
 彼女の帰還の遅れの報せにはひどくがっかりした。だが、彼女のいじらしい考えを聞くと、騙されたことに腹は立たなかった。ただ愛しくて、愛しくて、それだけが胸を占めていた。込み上がる想いに駆り立てられ、ギンは彼女に口接けようとした。
 だが、くうぅ、と可愛らしい音がそれを遮った。
「…お腹、鳴った?」
「…鳴った」
 きまり悪そうに絢女は苦笑した。
「お腹、空いてるのん?」
「朝に携帯食を食べたきり…」
「もう晩御飯の時間やで」
「うん」
と絢女は頷いた。
「あのね、ギン。さすがに今日は晩御飯を作る気力はないし、外に食べに行くのも億劫なの。出前をお願いしてもらえる?」
「今日の絢女に晩御飯を作らすような、鬼やないよ」
 ギンは答え、続けて、
「何か食べたいものある?」
と問うた。すでに考えていたのだろう。絢女は即座に、
「逢坂屋の櫃まぶし」
と応じた。
「それとね、うざくと鯉のあらいも付けてっておねだりしていい?」
「絢女、うざく、好きやもんなぁ。大盛りにしてもらう?」
「ええ。お願い」
 彼女を部屋に上げ、ギンは逢坂屋に出前を頼んだ。依頼を終えたギンが居間に戻ると、絢女は座卓にうつ伏せて寝入ってしまっていた。
 彼女の顔も見えず、声も聞けないのは淋しかったが、無理に起こす気にはなれなかった。屈強な男でさえ、帰り着いたら布団に倒れ込んでしまうほどの過酷な遠征を終え、疲れ切った身体に鞭打って、彼女はギンに会いに来てくれたのだ。ほんのちょっとの隙に睡魔に負けてしまうのも当然だと感じた。彼女の隣りに腰を下ろし、ギンはただ彼女を見守り続けた。

 寝台に腰かけて、ギンは悩んでいた。
 絢女を求めていいものなのか、断を下せずにいたのだ。
 絢女の不在の間、ギンは修道僧のような清らかな生活だった。彼女の不在を承知で誘いをかけてくる女はかなりの数に上ったが、ギンは全て振った。昔のように、他の女で欲望を紛らわせようとは考えられなかった。欲しいのは絢女唯一人で、ギンにとって、最早、他の女は、欲望を処理するだけの用すら果たせなくなってしまったのだ。他の女を抱くくらいなら、記憶に残る絢女の姿態で自己処理する方がまだましだった。本当のところ、絢女を目にした時から欲しくて欲しくてたまらなかった。だが、明らかに疲れ切っている彼女の姿が、理性を勝らせた。
 食事の間も、彼女はずっと眠そうにしていた。そして、ギンが出前の器を洗っている間に、彼女は再び眠りに落ちてしまった。座卓で転寝させるわけにもいかないので寝台に運ぼうとしたところ、彼女は目を覚まして、風呂に入りたいと強請った。言うまでもなく、遠征の間は風呂などろくすっぽ入れない。隊長舎と副隊長舎には、シャワー設備が備わっていた。その為、ここに来る前にシャワーだけは浴びてきたそうだが、やっぱりちゃんとお湯に浸かりたい、と彼女が主張するので風呂の用意をした。ギンとしては、彼女を先に風呂に入れるつもりだった。そうすれば、自分が風呂に入ってる間に、絢女は寝入ってしまう筈だから、すっぱりと諦められると考えたのだ。だが、彼女はどうしてもギンに先に入れと言って譲らず、結局、彼が一番湯を使った。
 絢女に無理をさせたくない。今晩はゆっくりと身体を休めさせてやりたいと思う心に、身裡から湧き上がる欲情が抵抗する。欲しいくせに物分かりのいい振りをするなと唆す。
 理性と欲望のせめぎ合いに葛藤していたギンは、絢女が風呂に入ったまま、一向に出て来ないのにかなり長いこと気が付かなかった。もともと絢女は長風呂の傾向があるのだが、それにしても、いくら何でも遅い。まさか、風呂に浸かったまま眠ってしまい、溺れてはいないかと蒼くなって廊下に出た時、湯殿から戻って来た絢女と顔を突き合わせた。
「どうしたの?」
「あんまり遅いから、心配になって。風呂で溺れてへんかと」
 ギンの応えに、絢女はばつの悪い顔になった。
「実は溺れかけたの」
「やっぱり…?」
「いつの間にか眠っちゃって、湯船に沈んでしまって。顔がお湯に浸かって、びっくりして目が覚めたの」
「危ないなぁ」
「ごめんなさい。遠征から無事に帰って来たのに、三番隊のお風呂で溺れたなんて洒落にならないわね」
「全くや」
 今晩は諦めようと、ギンは思った。少しでも触れてしまうと、自分の欲望に歯止めが利かなくなりそうで、ギンは絢女とわずかに距離を保ったまま、
「今日はゆっくり寝ぇ」
と告げる。だが、そんなギンの努力を絢女が砕いた。彼女は我から、ギンに抱きついて来たのだ。
「絢女…。あかんよ」
 ギンは柄にもなく焦った。粉々に砕けそうな理性を必死にかき集め、
「離れてや、絢女。我慢出来ひんようになる」
と諭した。絢女は縋りついていたギンの胸元から顔を上げると、
「私、明日、非番なの」
「知っとうよ」
 遠征隊には帰還の翌日から七日間の特別休暇が与えられる。護廷の死神には、平均して六日に一日の割りで非番が巡ってくる。だが、遠征の場合、休暇なしで一ヶ月半を過ごさねばならず、その埋め合わせという意味と、そのくらいの間、休養を取らないととても通常業務に戻れないという体力的な事情があった。従って、今回も、絢女を筆頭に遠征隊は休養に入り、休暇明けの八日後に引継ぎを行うまで、五番隊の業務は遠征中と同様に他隊が預かったままということになる。
「ギン、明日、私が疲れて起きられなくても許してくれるでしょう?」
 絢女の眸に情欲の焔を認め、ギンはごくりと唾を飲み込んだ。
「ええの、絢女?」
 こくりと絢女は頷いた。彼が絢女に欲情していたように、絢女もギンを求めていたのだ。
「きつくしないでね…」
 含羞を含んだ懇願に、
「努力する。けど、止められへんかもしれへん。きつうしてしもたら、かんにんやで」
と告げ、ギンは絢女を抱きしめた。
 貪るような口接けの果て、絢女の身体を寝台に押し倒す。一月半ぶりに二人分の重みを受け止めた寝台が、歓喜の軋みを上げた。


*1 煙管の中央の管の部分。
  煙管は大まかに三つの部位から成り立つ。刻み莨を詰める椀型の火皿に首が付いた羅宇と
  接合する部分を「雁首」と呼び、口を付ける部分は「吸い口」という。
  羅宇が金属製のものもあるが、一般的な煙管は雁首と吸い口が金属で、羅宇が竹製。
  彫刻などの細工が施されるのは主に雁首と吸い口の羅宇との接合部分であった。
*2 一刻いっこく=約14分。一刻いっとき=約2時間。
*3 昼の八つ:午後3時(前後一時間程度)。
  夕の七つ:午後5時前後。
  暮の六つ:午後7時前後。ここでは午後6時過ぎ
  夜の五つ:午後9時前後。
  夜の四つ:午後11時前後。
  申の下刻:午後4時半~5時くらい。

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 131313打キリリク小噺

 リクエストは「絢女に会えない日の市丸隊長」。どちらかが出張とか、残業続きで普通に会えない日はよくありそうなので、今回は長いこと会えない上に連絡も取れないという状況を考え出してみました。時間軸は叛乱終結から五年後の初夏です。
 ギンがあやめの花を部屋中に飾りまくるエピソードは、懐メロの「恋におちて -Fall in love-」の「吐息を白い薔薇に変えて、会えない日には部屋中に飾りましょう」というフレーズから思いつきました。すっごく古い曲。この曲が流行っていた頃、私はいくつだったけ? と思わず首を捻ってしまいました。一応調べてみたところ、歌/作曲は小林明子、作詞は湯川れい子で1985年の曲でした。おお、四半世紀以上前! うわー、自分がおばさんになったことをしみじみと実感してしまいますね。
 それにしても、拙宅の市丸隊長は絢女が絡むと打たれ弱いへたれに成り下がりますねぇ。キリ番ゲッターのリリさまは市丸さんのファンだそうですが、こんなへたれ市丸でもOKなのでしょうか? 多少の疑問を感じつつもキリ番作品納品です。

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2012.06.04